

1. 1+1=1。
2. 歌に憧れてる。
3. 練習って、なかなかいいもんやな。
4. 刺激を受けるから創れる。
5. 痛みを味わいながら「素の自分」で勝負したい。
歌に憧れてる。
──ブラジル音楽にはどのように出会ったんですか?
くばく ロックに飽きてしまっていた時期があって、ちょうどその頃、仲の良かった大学の友達が亡くなって、うまく説明できないですがいろんなものが行き詰まっているような感覚のときに、たまたま立ち寄ったタワーレコードでやる気なく視聴した『Cool Bossa 2』ってコンピレーションアルバムでブラジル音楽を知りました。主にMPBですね。「まだまだ知らなかった新しい音楽あるんやな」という嬉しい新鮮な驚きでした。
その『Cool Bossa 2』で最初に気に入ったのが、 Elis Regina の「Se Você Pensa」で。ぼくは当時、コード進行の多い曲が好きじゃなかったんです。コード進行が音楽やグルーヴを弱くしているみたいな印象があって(笑)。ツェッペリンみたいな、少ないコードでずっと繰り返すような感じが好きで。似たような音楽を探して、ジャズ・ファンクとか、一方ではポストロックのような音楽を聴いてみたり、なんしかコード進行のなよなよ感が好きじゃなかったんですよね…。で、しかし、「Se Você Pensa」は、なんか聴いたことのないかっこいいコード進行してるし、リズムもイケイケだし、「うぉー!」って(笑)。ぼくにはジャズ・ファンクの進化系みたいに聞こえました。
それで『Cool Bossa 2』を買ったら、そこに Caetano Veloso の「Lua de São Jorge」が入ってたんです。「変わった曲やな」と思って。サイケな感じやけど、ちょっとフュージョンとかAORみたいな雰囲気もあるし。
くばく そのあとしばらくして、「Lua de São Jorge」も入っているカエターノの『Cinema Transcendental』を買ってみたんです。名盤ですけど、これが独特なんですよ、臭みもある感じで。ちょっと土っぽいというか田舎っぽいというか、洗練された感じがあんまりない。でも、気持ちいい。そして、楽器の編成はフュージョンやAORみたいな感じで。「自分が知らない世界に、こんなにかっこいい音楽があったんや」って。音楽を聞くのに飽きてきたところで、ブラジル音楽に出会って新しいページが開けたっていうかね。「これはいいの見つけたな」と。
それ以来、カエターノにハマっちゃったんですよ。当時、東京にジャニスっていう大きなレンタルレコード屋があって、カエターノのアルバルを全部置いてたから、一枚一枚借りていって、「これは好きかな」「これはそうでもないなぁ」っていろいろ聴いてたんです。そのなかでめっちゃ気に入ったのが『ポートレート(CIRCULADÔ VIVO)』で、とくに Mickle Jackson の「Black or White」のカバーが衝撃でしたね。
くばく それまでは、音楽を聴いてても 「サウンド」というか、いろんな 「音」が鳴っているのを楽しんでたんですよね。カエターノも奇妙な 『Cinema Transcendental』のような 「音」が好きで、カエ様の 「歌」をそこまで注目して聴いていなかったんですよね。でも 「Black or White」のカエターノのシンプルな弾き歌いを聴いて、「あれ、この曲ってこんないい旋律やったっけ…」と。本家のマイケルの歌もすごく尊敬しているし、好きなんですけど、カエターノが歌うと歌の旋律が磨かれて浮き上がってくるというか…。ほんとこの 「Black or White」を聴いて、「『歌』っていいな」と思うようになりました。当時流行っていた漫画の流れもあり、「『カンタービレしている』ってこういうことなんかな」と思いました。
──「歌っていいな」と思うようになられた。
くばく 音楽って、究極は曲線を目指してるとぼくは思ってるんですよ。鳥が羽をふわーって広げる感じというか。音楽というものの持つ広がるようなイメージを、カエターノの「Black or White」は具体的に表現しているように思えるんですよね。すごくいい緩急があって、音だけでドラマを感じるなぁって。彼の音程感も独特だなぁと感じて、だからこそカエターノの歌ってすごい伝わってくるんですよね。
『Joia』では The Beatles の「Help!」をカバーしてるんだけど、ぼくが「Black or White」を聴いて感じたのと同じようなことを「Help!」で感じている人もたぶんいるんじゃないかなと思う。
──カエターノの「Help!」を聴いたとき、ギター一本と歌でこんなにも雰囲気の違う「Help!」もいいなぁと思いました。
くばく 「あ、歌ってこういう感じなんや」って初めて気づかされたというか。そしてそのあとですね、Joãn Gilberto がいいなぁと思うようになったのは。それまで実は、ボサノバはあんまり好きじゃないなって思ってたんです。でも歌というものがすごく好きになってから、「ジョアンいいなぁ」と思うようになりましたね。
──カエターノに出会って歌のよさを感じてから、ボサノバにも目が向き始めたんですね。
くばく 若いときはあんまりピンとこなかったけど、年齢を重ねたら好きになっていったという感じですよね。だから、歌をちゃんと歌える人はかっこいいと思うんです。ぼくは弾き歌いをやっていきたいけど、同じくらい歌が歌えるということにもめちゃ憧れてます。
──くばくさんのライブにお邪魔したり音源を聴いたりしていると、歌を歌うということをくばくさんが大事にされているんだなというのが伝わってきます。
くばく ありがたいです、伝われば。音楽って芸術というよりもどちらかといえば演芸の側面が大きいと考えると、歌よりもサウンドのほうが伝わりやすいと思うんですよね。だから本当に歌だけで人に楽しんでもらうには、なかなか道は険しいな…と。でも、いつかは歌で伝わるようになればいいなと思いながらやってます。
