「広がれ、パンデイロ!」まだ見ぬリズムの先で、一打を遊び尽くす喜びを

1. 「自分で作れるかも。」
2. ブラジル打楽器を作る仕事
3. ”らしさ”を織り込む
4. ずっと、「あ、できた。」を楽しみに
5. パンデイロの発展

ずっと、「あ、できた。」を楽しみに

──楽器作りをされるなかで、困ったことや大変なことはありますか?


ばんどう そうやね。ブラジルとやっぱり気候が違いすぎるというのがね、難しいこともあるかなぁ。

たとえば、材料の木にしても、ブラジルとかの乾燥したエリアに生えてるような木と、日本のこの高温多湿で四季があるようなところの木とでは、質が違ってるから、楽器になったときの音の鳴り方もやっぱり多少違うんでね。

だから、ブラジルのあの音を再現したいなと思っても、なかなかできないときがあるね。同じものを作る必要はない、と思えばべつにそれでいいんだけど、「あの音、あの鳴り方の、あの感じを出したい」と思ったときに、なかなかうまく出せへんときがあるから。


──日本で作るにあたって、難しい部分なんですね。材料にはどのような木材を使われているんですか?


ばんどう 日本の木もあれば輸入材もあるんやけど、基本的にブラジルの木材は輸入されていないね。だから、いま手に入れられるものだと、北米産、アフリカ産、あと東南アジア産。


──そもそも材料がブラジルのものとは違う上で、使えるものを使いつつ、気候の違う日本で作ろうとすると、ブラジルの楽器のような音にはなりにくい。それは坂東さんとしては、「まあそういうもんだな」というふうに受け止められているんですか?


ばんどう そうやね。ブラジルの楽器と同じようなものはできない、っていうのはあるし、むしろ日本の木の方がいい場合もあるからね。


──なるほど。ブラジルの楽器は重量があるものも多いなか、坂東さんは日本のプレーヤーの体格にも馴染みやすい、とても軽量なパンデイロを作られているかと思います。それは、軽い木を使うことで実現されているのでしょうか?


ばんどう 単純に木が軽けりゃいい、ってことじゃなくて。軽い木を使うと、すごい音量が小さくなる。だから、木は重いやつを使って金属の部分で軽くするとか、バランスを調整しながら、いろんなパターンで作ってるね。


──楽器作りで、坂東さんが大切にされていることはありますか?


ばんどう ここで同じものを、ひたすらずっと何年も作り続けててもね、パンデイロっておもしろいから、1つできると、「あ、できた」みたいな、そういう楽しみがあるんよ。できあがって、叩いて、音をね、こう、確かめて。そういう気持ちがずっと続くように、っていうのは思ってるけどね。

流れ作業みたいにならないように。気持ちの持ち方としてね。


──「流れ作業にならないように」という言葉が印象的です。わたし自身、ライブをするにあたって「一つひとつ丁寧にやりたい」と思っていても、数が重なると、いつの間にか流れ作業みたいになって、終わったあとに「ちゃんとやれた」「楽しめた」という感覚が残らないことがありました。その体験を思い出すと、坂東さんがこれだけ長い間、多くのパンデイロを作り続けても流れ作業にならない、その理由を知りたいと思いました。


ばんどう そうやね…。木も皮も天然のものだから、同じように作っても同じにはならない、っていうのもあるよね。「なんかこれちょっとダメだな」って思うときもあるし、かと思えば、「もうこれ本当に最高やな」っていうときもあって。いろいろだから、そういうおもしろさがあって、流れ作業にならないのかもしれんけどね。


──なるほど。木だったら、「思うように曲がらない」とか、そういうことですか?


ばんどう 変形してしまったりとか、あるよね。あとは、同じ木で作っても、鳴り方が違ったり、とかね。今は材料の良し悪しを見分ける力もついてきてるから、できあがった時点で「ダメ」となるのは、何ヶ月に1回あるかないかぐらい。それでも、形や鳴り方が思うようにいかないときは、作り直すね。やっぱり、ちょっとイマイチやなって思うものを、世に出したくないからね。


──パンデイロという同じものを作っているようで、実際には木や皮それぞれに個性があるから、工程は同じでも、毎回違うものと向き合っている、という感覚なんですね。

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