
サンバの輪 – a nossa roda –
京都の片隅で
Nos cantos de Kyoto,
サンバの火を守り続けてきた
小さな輪。
物語は、ここから。
uma pequena roda
que manteve viva a chama do samba.
Este projeto começa aqui.

roda de samba(ホーダ・ヂ・サンバ)──
それは、みんなで輪(ホーダ)になり、歌って叩き、楽しむ、サンバのセッションのこと。
家族や近所の人が集まり、飲み、食べ、語らう。すると、だれかがいつのまにか楽器を手に取り、歌い出す。みんなで知っている曲を大合唱しながら、音楽のあるひとときを豊かに楽しむ。
大規模で派手なカーニバルとは異なる、日常に息づくサンバはpagode(パゴーヂ)とも呼ばれ、サンバの本場・ブラジルはリオデジャネイロを中心に、街角のそこここで出会うことができます。
そんなブラジルの息吹を感じるパゴーヂが再現されるのが、ここ、出町サンバです。
地下へ降りて、輪に触れる

毎月第1日曜日、京都・出町柳エリアにある、VIVA LA MUSICA! での夕方──
時間になると、一人、またひとりと、地下へ続く階段を降りてきます。
お酒を注文し、輪へ近づき、だれからともなく始まった歌に、そっと楽器を重ねていく。
歌う曲はその場で決まります。
一人ずつ歌い継ぐこともあれば、2〜3曲続いたあと「それが来たら、次はこれだ!」と、ふいにだれかがマイクを取って別の曲につなぐことも。
丁寧に歌い上げられただれかのオハコをみなでしっとり味わうもよし。
激しいパーカッションに身を任せ、アップテンポな歌の連なりにアツくなるのもよし。
コール&レスポンスでだれもが知る名曲やパゴーヂの定番曲に大盛り上がりするもよし。
パウマ(手拍子)や「ララヤ〜♪」(歌詞がなく、みんなで歌い合わせられる箇所がたびたび出てくるのも、サンバの”庶民性”と”大衆性”を感じさせます)で参加するもよし。
もちろん、輪を外から眺めるのもまた、深い味わい方のひとつです。
VIVA LA MUSICA! の美味なおつまみや料理、お酒と音楽が創りあげる夜のひとときが、一日を心地よく締めくくってくれます。
大きな流れに乗り、たゆたい、みなでつくる輪

このパゴーヂがスタートしたのは、2005年ごろのこと。
オーナーとその友人が、ブラジルのサンバ動画を見ながらパンデイロを叩き始めたのをきっかけに、この集まりが始まりました。
以来、20年以上続いています。
そんな出町サンバには、いくつかおもしろい特徴があります。
最大の特徴は、その日ふいに訪れた人も輪に加われることです。
パゴーヂのイベントでは、演奏者が決まっていて、それ以外の人間がその場で楽器参加するのが難しいこともよくあります。
でもここでは、他の地域や遠方から当日訪れる人も、サンバに興味を持ったビギナーも、その場でサンバの輪に入ることができます。
輪に入るうえで大切なのは、サンバの楽器や歌の技術以上に、「みんなでひとつの音楽をつくっている」という感覚を持てるかどうか。周りのリズムや歌に耳を傾けながら、その場の流れに乗り合わせていくことが、サンバを楽しむコツです。
さまざまな楽器の使い手や歌い手がいて、新しい曲や楽器を学ぶのには困りません。
また、重い扉をひらき地下に広がるサンバの世界に飛び込んだビギナーに、古参の「Pagodeiros」(「パゴーヂの民」の意味)たちが楽器を教える光景が生まれることも。常連参加者のなかには「先生」として楽器を教える人もいれば、自分で楽器を作ったり、販売したりしている人もいます。
演奏の合間には、日本国内やブラジルのサンバにまつわる情報交換や、特定のアーティスト・楽曲・音楽ジャンルにかんするうんちくを、演奏そっちのけで熱く語り合う場面も。
「サンバを楽しみたい」という気持ちが深まれば、どこまでも深めていける──
そんな環境が、ここにあります。
一夜に消える儚さと、時を紡ぎつづけるしなやかさ

この集まりには、「ホスト」がいません。
そして、固定された「メンバー」もいません(「常連」はいます)。
その日に来た人が、その日の輪(ホーダ)をつくる「メンバー」です。
その日、そのとき、そこにいる人それぞれが、自分自身を差し出し、「いい輪(ホーダ)」をかたちづくっていきます。
参加者が変われば、場に流れる曲も大きく変わります。
古くから愛されるクラシックなサンバから、90年代のホマンチコ、最近のキャッチーなパゴーヂのヒット曲まで、年代やアーティストによって異なる雰囲気が味わえるのは、新しい曲を知る機会になっておもしろい。
ボサノヴァ、サンバ・ホッキ、MPB、フォホー、セルタネージョなど、サンバ以外のジャンルが演奏されると、ブラジル音楽の豊かさと奥深さを感じます。
特定のアーティストの楽曲をレパートリーにしている人がいればメドレーが生まれ、みんなで楽しめる定番曲をだれかが演奏し始めれば、大合唱間違いなし。
サンバのリズムのはずなのに、なぜか日本語の詞が耳に入ってくる局面に立ち会うこともあるかもしれません。
「そこにいる人」に委ねられることで、毎回ちがう景色が生まれ、色合いはつねに移ろいながら、20年ものあいだ続く、摩訶不思議な空間。
それは、VIVA LA MUSICA! で毎月「サンバの日」が確保され、当日音が始まるときに「輪をつくろうとする人がそこにいる」という、”場”の維持に最低限必要な秩序がピンポイントに存在するから。
そしてその上に、「その日のサンバを、みんなでつくる」という参加者それぞれの心意気が、その人自身を含むこの場に集う人それぞれの人生を豊かにしてきたから。
だから、今もここに、在る。
そんなふうに感じます。
その日のサンバは、その日にしかない。
だから、
みんなが参加者であり、みんなで輪をつくる。
一夜の刹那と儚さを感じさせながら、そこに集う人がいる限り、時を超えてしなやかに在り続ける──
それが、この場を「特殊」たらしめてきたのだと思います。
輪は結ばれ、降りつもるあわいに、編まれた物語がまためぐる

サンバが人をつなぎ、その日一度きりのうねりを生み出す。
毎月「そこに在る」この集いは、その瞬間瞬間の輪の記憶を参加者の心に刻み、やがて次に生まれるあらたな輪へとつながっていきます。
ここで、これまでどれだけの人生が交差し、その一ページが彩られてきたのでしょう。
サンバと人とのささやかな交わりは、明日を生きる勇気になったり、ときに自分だけの気づきを生み、新しい一歩を呼び起こしたりしながら、この場に触れた人それぞれに「自分の歩む道」へと、静かに灯をともしてきました。
こうして生まれてきたサンバのひととき──
それは、京都の片隅でその火を絶やさず守り続けてきた人びとと、今夜ここに集うすべての人びとが紡ぐ、かけがえのない時間。
一度だけの音が降りつもり、息づく永い記憶に、あらたな輪がめぶく。
それが、「出町サンバ」です。
No VIVA LA MUSICA!, em Demachiyanagi, Kyoto, acontece o “Demachi Samba”, uma roda de samba que já dura há vinte anos. No primeiro domingo de cada mês, frequentadores antigos e pessoas que vêm pela primeira vez — japoneses, brasileiros e gente de várias origens — se misturam e aproveitam a “roda” que nasce naquele dia, naquele instante. As músicas são decididas na hora, e o clima muda conforme quem aparece: desde sambas clássicos até pagodes mais recentes. O mais importante é ouvir o som ao redor e “fazer música juntos”.
Não há anfitriões fixos nem membros definidos. “Quem veio hoje” é quem forma a roda daquele dia, e é por isso que cada encontro tem um cenário diferente. O espírito de “vamos criar o samba de hoje juntos” é o que manteve viva, por vinte anos, a chama do samba em um cantinho de Kyoto.
Essa roda de samba tem conectado pessoas ao longo de muitos anos e trazido, para cada vida que passa por ali, pequenos encontros, percepções e coragem. Assim, a roda se forma a cada passo de quem chega, se acumula e segue girando, rumo à próxima roda.
