

1. Gloria Estefan との出会い
2. 押し寄せるサンバが連れてきた世界
3. ”浮き沈み”の「波」に乗る
4. スタジオが、とにかく楽しい。
5. 「俺は、サンバだぜ。」
”浮き沈み”の「波」に乗る
──サンバをやってこられて、「自分にとって、ここがおもしろいから続いてきたんだな」ということは、ほかにありますか?
はしもと そうね。サンバって一口に言っても、それぞれ好みが違ったり変わったりするじゃないですか。「自分はこの人が好き」みたいなのがあるし、ほかの人も「この人はあの人(特定のアーティストの曲を好んで歌う)」とかあるやん。自分の場合、最初は Paulinho とか大好きやってんけど、いまは Fundo de Quintal とかもっと聴き直したいな、もっとやらなあかんな、っていう気持ちになるんよね。
実際はそう思いつつも、あけみ(あけみサンバ)での練習があったりすると、そっちに時間も気も取られてなかなかできないけど、つねに興味は湧いてくるっていうか、こう、「終わりがない」っていうかね。
「ここで止まってられへんな」みたいなのが、やっぱあるじゃないですか。パゴーヂやライブとか行って聴いてたら、「あ、こんな曲もあんねや」とか、「そんなんもいいなぁ」とか。で、「そっちでそれ行かれたら、こっちはこんなんもっと出していこ」とか。そうやって、いろんな人から刺激を受けるのは、おもしろいよね。「俺もちょっと頑張らなあかんな」って思う。
ほんで、最近カバコ買ったんですよ。
──そうなんですか。

はしもと オークションで6万くらいで買ったんやけど、すごく良くて。それまで、あんまり楽器自体に興味がなくてね。サーフボードもあんまりこだわりなくて、「乗れりゃいいや」くらいにしか思ってなかって。
でも、いざ新しいカバコを買ってみたら、「やっぱりちゃんとした楽器っていいんねやな」と思って。やっぱね、違う気がする。パゴーヂよりはライブ用の楽器として使いたいから、それまでにちゃんと弾き込んどかなあかんなと思ってるけどね。
ライブの後に録音を聞いてると、「自分のカバコ、下手くそやなぁ」「なんかひどいな、これ」ってなるのよね。楽器もそうやし、音質にもこだわりがなかった。でも、そういうのもライブやったら出るじゃないですか。「こんな音でやってんねや」って。「お客さんにも失礼やな」と思ったのね。そういうとこは改善していきたいね。カバコはもっと練習しなあかんなと思うわ。
──やるほどに「もっと練習しないと」と思うというのはサンバに限らずなんでもそうかもしれませんが、何年もやってこられた橋本さんの口からお聞きすると、「そうなのかぁ〜!」という気持ちになります。
はしもと 何年もやってきたって言っても、途中でやっぱり「波」というか、浮き沈みはあるやんか。その「沈んでる」というか、低い時期はけっこう長かったよね。あけみサンバはずっとやってるし、それなりには続いてんねやけど、最初のころのような勢いはなくなって、低空飛行になる時期はあったなぁ。そういう時期に、「橋本さん、なんか最近サンバ好きちゃうやろ?」って、的確なこと言うてくる人もいた。
──こわい(笑)
はしもと まぁでもそういう時期があって、また最近ちょっと上がり調子になってきてるかな。だから、サンバやってる期間が長い短いは、あんま関係ないんじゃないかなぁ。

──まさにお話しくださったように、わたしも実は今、楽器に触りたい気持ちが全然ない状態が1年以上続いているんです。音楽もあんまり聴かないし。自分のなかで心当たりを探ってみるのですが、よくわからなくて、「なんだか手につかなくてしんどい」みたいなのが続いていました。橋本さんは、その理由というか、「波」についてどう捉えてるんですか?
はしもと 理由は、どうなんやろね……ある程度満足してたとこもあるのかもしれんね。デンパゴにも慣れて、そこで盛り上げ役もできるようになってきて、「できるやん」って。もちろん、あけみサンバもやってるし、新曲も練習はするけど、自分自身が新しく「これが歌いたい、これやりたい」っていうのがあんまり出てこなくなってたね。
だから、「なんで?」って訊かれると難しいけど、なんでしょうね。気持ちが下がったり止まったりってことは、やっぱりあると思う。最初の気持ちのままで突進はできひんと思うわ。できる人ももちろんいるやろうけど。
──ピンポイントに理由があるわけではなくて、なんというか、全体的な自分のサイクルみたいなもんなんですかね。人生って、べつに音楽だけでできているわけじゃないですし。苦しくはなかったんですか?
はしもと それはなかったね。単に「手つかんわぁ」って感じ。「もうなんかやる気もないし、やめようかな」みたいなことも、思わなかったね。
でも、それは、あけみサンバがあったからかも。引き止められるものがあるというか、自分がやることがあるというか。やらなきゃいけないわけじゃないけど、それがあるから新しい刺激がある。でも下がっているときには、自分から新しくトライしようというのはない。その時期が終わると、またポコってやりたくなる。そんな感じだったかなぁ。
──なるほど。

はしもと そやし、あんまり自分が乗ってへんときには、「それはそういうときやな」と思ったらいいと思いますよ。たぶん、そのうちにまたやりたくなると思う。ほかにやりたいことが見つかるかもしれないしね。
──ありがとうございます。今回こうやってお話を聴かせていただくことにもつながっているので、お声がけしてよかったなってあらためて思います。
